論文には独自性が必要だ」とよく言われる。そこで「なるべく
変わったことを主張してやれ」という態度で論文に臨む人もいる。多
くの人が書きそうなことを避けて、なるべく目立ちそうな、奇抜なこ
とを言ってみようとするわけだ。
|これはたしかに一つの「手」と言える。常識的な考え方にあえて
逆らって別の考え方の可能性を試してみること、これは考えを進める
うえではよい習慣だと言える。例えばSFのように、そういう手法を
自覚的に採用している小説もある。SFは通常の世界とは別な世界を
設定することによって、私たちが持っている通常の行き方のイメージ
を相対化し、そのことによって人間の生の新たな可能性を追求しよう
とするのである。このような常識の相対化は、論文においても必要な
立
ことだ。
だが、ただ奇抜なことを言いさえすれば独自性が出てくるわけで
はない。ただ目立とうとするだけの演技が「あざとい感じ」にたなって
ば、目立ってやろうという魂胆だけが読み手に伝わってくることにな一
しまうように、その人のなかでしっかりと考えられた過程がないなら
。N
また、目立ってやろうという魂胆から書いているのでなくても
常識を否定してただ新しいイメージを提示しようとするだけでは、や
はり文章の力にはなりにくい。「新しさ」は、それが新しいしかたでも
って人間の生の内実をたしかに照らし出していると感じられるとき、
または、それが「私たちは今までそう考えてこなかったが、当然そう