間二 次の文章を読んで、あとの問いに答えなさい。
ある日、「盗人」は道で「僧」と出会い、祈りの力によって善人にしてほしいと頼んで別れた。その
後、「盗人」と「僧」は再び出会った。
(引きとめて)
盗人、僧の袖を控へて、怒つて申しけるは、「われ御辺を頼むといへども、その甲斐なし。祈誓したま
(あなた)
はずや。」と申しければ、僧答へて日はく、「われその日より片時のいとまもなく、御辺のことをこそ祈り
へん し
(おっしゃるので)
(あなた)
Sk
候へ。」とのたまへば、盗人申しけるは、「おことは出家の身として、虚言をのたまふものかな。その日よ
(仕方がない)
はかりごと
り悪念のみこそおこり候へ。」と申しければ、僧の謀に、「にはかに喉渇きてせんかたなし。」とのたまへ
(お入れしましょう)
ば、盗人申しけるは、「これに井戸の侍るぞや。われ上より縄をつけて、その底へ入れ奉るべし。飽くま
くだん
で水飲みたまひて、上がりたく思しめし候はば、引き上げ奉らん。」と契約して、件の井戸へ押し入れけ
り。かの僧、水を飲んで、「上げたまへ。」と のたまふとき、盗人力を出だしてえいやと引けども、
(どうして上がるはずがあろうか)
いささかも上がらず。いかなればとて、さしうつぶして見れば、何しかは上がるべき、かの僧、そばなる
(全く上がらない)
石にしがみつきておるほどに、盗人怒つて申しけるは、「さても御辺は愚かなる人かな。その儀にては、
いかが祈祷も験あるべきや。その石放したまへ。やすく引き上げ奉らん。」と言ふ。僧、盗人に申しける
しるし
は、「さればこそ、われ御辺の祈念をいたすも、このごとく候ふぞよ。いかに祈りをなすといへども、ま
づ御身の悪念の石を離れたまはず候ふほどに、御辺のごとく強き悪念は、善人になりがたふ候ふ。」と申
(もっともなことであるなあ)
されければ、盗人うちうなづゐて、かの僧を引き上げ奉り、足元にひれ臥して、「げにもかな。」とて、そ」
(髪を切って出家し)
れより元結切り、すなはち僧の弟子となりて、やんごとなき善人とぞなりにけり。
9多r
そほものがたり
(「伊曾保物 語」から。)
本文の内神、男