入
大石 芳野
希望
八重桜の濃いピンク色に、真昼の光線が反射する。まぶしいほどの色調が辺りに漂い、胸
が騒く。いい歳をして……と、自分を叱陀しながらも、そよ風でゆりかごのように揺れる花
にじっと見入っていた。
明るい声が響いて我に返り、振り向いた。二十歳そこそこの若い男女が夢中で話しながら、
太い幹の向こうから近づいてきた。手にした本の中身を論じ合っているようだ。ぼんやりと
たたずんでいた私を彼らはちらりと見て通り過ぎていった。
それでも私はなんだかうれしくなった。最近の若い人には夢がない、と耳にすることがあ
る。けれど、すれ違った彼らには、あふれんばかりの希望や夢があるように感じられたから
だ。
希望というのは、人間が生きるための大きなエネルギー源といえるだろう。だからこそ絶
望は、死につながることが多い。