B Kの丈章を読んで、あとの間いに答えよ
かす
(注1)
ある時、夜更けて樋口屋の門をたたきて、酢を買ひにくる人あり。中戸を奥へは幽かに聞
。 もつかしながら一文がの」と言ふ。空
ーひのくち
(注3)
(州N)
こえける。下男目を覚まし、「何程がの」と言ふ
寝入りして、そののち返事もせねば、ぜひなく帰りぬ。夜明けて亭主は、かの男よび付けて、
かどぐち (注4)
(注5)ぎょ い
もろはだ」
かた ぢ
何の用もなきに「門口三尺ほれ」と言ふ。御意に任せ久三郎、諸肌ぬぎて鍬を取り、堅地に
気をつくし、身汗水なして、
やうやう掘りける。その深さ三尺といふ時、「銭があるはづ、
かひがら
いまだ出ぬか」と言ふ。「小石·貝殻より外に何も見えませぬ」と申す。「それ程にしても銭」
が一文ない事、よく心得て、
(注1) 中戸……店と居間を仕切る戸。
(注2 何程がの……どれほどですか。
(注3) 文……通貨の単位。
(注4) 尺……長さの単位。一尺は約三○·三センチメートル。
(注5 御意に任せ……ご命令に従って。