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旨 禁中に変化の者が現れ、貞房が「錦木」の和歌を詠んで退ける。貞房は「錦木の将軍」と呼ばれるようになった。
本文確認・現代語訳
要
きた
ある時、禁中には変化の者、夜な夜な出で来りて、玉体をなやまし奉り、不思議多き中に、丈六尺ばかりなる男の、烏帽子、
夜な夜な出て来て、 帝のお体を苦しめ申し上げて、不思議なことが多い中に、身の丈が六尺ほどの男で、烏帽子、
ある時、宮中には化け物が、
狩衣着たるが、夜の大殿の東の方よりさしのぞき、おのれが胸をうちさすり、大息ほつとつき、「胸あはずして」と言ふ。声聞
大きな息をほっとつき、「胸あわずして」と言う。
自分の胸をさすり、
狩衣を着ている者が、帝の寝所の東の方からのぞいて見て、
声は
過去
おほんうら
消推・止
にしき
く者の骨髄に通り、すさまじきことかぎりなし。「これただごとにあらじ」とて、神祇官にして、御占ありければ、「昔、奥州錦
聞く者の骨髄に通り、 ぞっとすることはこの上ない。 「これはただごとではないだろう。」 ということで、神祇官において、御占いをなさったところ、「昔、奥州の
婉曲・体
完了・体は過去
木の郡にて、女を恋ひかねて、むなしくなりたる男侍りしか。 その執心この世に留まり、君の御うつくしみを受けんため、かや
錦木ので、女を恋しく思う気持ちをこらえられないで、死んでしまった男がおりました。 その執心がこの世に留まり、帝のご慈愛を受けるために、
使役・用
過去
完了已
うにふるまひ候ふ」と奏開しければ、奥州へ勅使を立て、くだんの者の墓所にて、さまざまの法事を行はせ給ひたれども、禁中
奥州へ使を立て、
ように振る舞います。」と奏上したので、
例の者の墓所で、
さまざまの法事を行わせなさったが、
宮中
の騒ぎは変はることなし。 また公卿、詮議ましまして、さらば器量の武士におほせつけて退治あらん、東西の将軍にこのよし宣
それならば優れた武士に命令なさって退治しよう、と、 東西の将軍にこの旨の宣旨が
くぎやろ せんぎ
の騒ぎは変わることがない。
また公卿が、協識なさって、
ラ下二・巳 さんだい
たち
旨ありければ、おのおの大剛の者を選び、引き具して、日暮
おのおの大変強い者を選び、
あったので、
うかがひ給へども、矢にも当たらず、太刀にもか
れば参内あり。
日が暮れると参内する。 のぞいて見なさるが、 矢にも当たらず、
引き連れて、
太刀にもかか
消
完了・体
とうのじじゅう
意志・止
からねば、みな難儀してゐたるところに、藤侍従進み出でて、「君の御許し候はば、この変化の者をば貞房しとめ申さん」と申
らないので、 皆難儀していたところに、
藤侍従が進み出て、 「帝がお許しになりますならば、この化け物を貞房がしとめ申し上げよう。」と
尊敬・用
あそん
ナリ体
推量・体
過去・
い。」とおっしゃったので、侍従殿は腹が
されければ、将軍の宮聞こしめし、「朝臣や、抜群なる望みし給ふかないかで後手にかなふべき」とおほせければ、侍従殿腹
申し上げなさったところ、将軍の宮がお聞きになり、「朝臣
どうして後からやって勝てようか、いや、勝てま
貞房〉よ、甚だしい望みをしなさるものだなあ。
過去・止
断定・体
立ち、「田村俊仁は五歳にて大蛇をいただき侍りき。武家の大将たる身は、老若に限り候ふまじ。存ずる子細の候ふ」とて、
消推・止
こぼり
としひと
ひんがし
WILSH
20
じんぎくわん
とど
さだふさ
たま
この